熊とボウガン(クロスボウ)の関係性・威力・法律・駆除の真実

近年、熊の出没ニュースが増える中で、一般の方の護身意識が高まっています。熊の駆除は猟銃が使われる事が一般的ですが、もっと安全に駆除することはできるのでしょうか、例えばボウガンを使って絶命させる事はできるのでしょうか。弓やボウガンは熊に有効なのか、また猟銃でないと倒せないのかも含めて検討していきます。しかし、結論から言えば、日本国内においてボウガンで熊を駆除したり、護身用として持ち歩いたりすることは、法律や実用性の面で非常に大きな問題があります。この記事では、提供された確かなデータに基づき、ボウガンの威力、法律の壁、そして熊駆除の現実について詳しく解説します。

目次

ボウガンやコンパウンドボウで熊は倒せるのか?威力と貫通力の真実

多くの人が疑問に思うのは、ボウガンの矢が巨大な熊に通用するのかという点です。結論から言えば、条件が整えば物理的には可能です。しかし、そこには高い技術とリスクが伴います。

ボウガンの矢は熊の厚い皮膚や筋肉を貫通できるのか?

ボウガンや弓矢が熊の体を貫通することは可能です。実際に海外では弓による熊の狩猟が行われています。しかし、矢は銃弾とは異なり、破壊力が限定的です。狩猟用ライフル弾は当たった瞬間に体内で破裂したり、散弾銃は広範囲を破壊したりしますが、矢はあくまで小さい範囲を刺傷するだけです。そのため、心臓や肺などの急所に正確に命中させなければ、熊を止めることはできません。急所を外せば、手負いの熊による逆襲を招く危険性が極めて高いのが現実です。

コンパウンドボウとボウガンの威力比較|熊狩りに通用するのはどっち?

過去の事例として、2010年に米ミシガン州の高校生であるジェシカ・オルムステッドさんが、カナダで体重約203キロという巨大な熊をコンパウンドボウ(複合弓)で仕留めた記録があります。ジェシカ・オルムステッドさんは当時17歳で標準的な体格であり、使用した弓の威力は60ポンド前後と推測されています。このことから、60ポンド以上の威力を持つ狩猟用クロスボウであれば、熊を倒す威力は十分にあると考えられます。

しかし、クロスボウには弱点があります。それは次弾を装填するのに時間がかかることです。強力なクロスボウほど弦を引くのに力が要り、再装填に1分以上かかることもあります。その間に熊に逃げられたり、襲われたりするリスクがあります。一方でコンパウンドボウは速射性に優れており、短時間で数本の矢を放つことが可能です。殺傷範囲が狭い矢を使用する場合、数本を当てて出血を促す必要があるため、実用面では速射できるコンパウンドボウの方が有利な場面もあると言えます。ただし、日本の熊が出没する森は遮蔽物が多く、クロスボウの射程距離の長さを活かせないケースも多々あります。ジェシカ・オルムステッドさんの事例でも、約14.6メートルという至近距離での射撃でした。

【歴史的検証】和弓などの弓矢で熊を仕留めることは可能だったのか?

弓矢全般において言えることですが、熊を仕留めることは「不可能ではないが効率的ではない」というのが結論です。先述の通り、熊を倒すには急所への正確な命中が不可欠です。現代の高性能なコンパウンドボウやクロスボウでさえ、至近距離まで接近し、高い技術で急所を狙う必要があります。したがって、和弓を含めた弓矢で熊を狩ることは、成功率や確実性という観点からは非常に難易度が高く、現代の駆除や護身においては推奨される手段ではありません。

日本国内での「ボウガン・弓」による熊狩りは法律で禁止されている?

威力としては熊を倒せる可能性があるボウガンですが、日本国内で使用することは法律で厳しく制限されています。

鳥獣保護法におけるボウガン(クロスボウ)と弓矢の扱いの違い

日本国内において、弓矢を使用した狩猟は鳥獣保護管理法で禁止されています。これはアメリカなどの海外とは大きく異なる点です。したがって、ボウガンやコンパウンドボウを持って山に入り、熊狩りを行うことはできません。法律で明確に禁止されている猟法であることを理解しておく必要があります。

銃刀法改正後のボウガン所持規制とハンティング利用の可否

2022年の銃刀法改正により、ボウガン(クロスボウ)の所持規制が大幅に強化されました。一定の基準を超えるボウガンの所持は原則として禁止され、所持するには都道府県公安委員会の許可が必要となりました。護身用やレジャー用として無許可で所持することは銃刀法違反となり、検挙の対象となります。また、登山時の護身用として携帯することも認められにくいのが現状です。さらに、ナイフに関しても注意が必要です。刃渡り6センチを超えるナイフを正当な理由なく携帯することは銃刀法違反となりますし、それ以下のサイズであっても隠して携帯していれば軽犯罪法違反になる可能性があります。つまり、日本国内で一般人がボウガンを熊対策として持ち歩くことは、法的にほぼ不可能です。

参考リンク:環境省 熊に関する各種情報・取組

海外の「熊ハンティング弓(Bear Hunting Bow)」事情と動画のリアリティ

日本とは異なり、海外では弓による熊猟が認められている地域があります。YouTubeなどの動画サイトでは、海外の狩猟者がライフルやコンパウンドボウで熊を狩る映像が確認できます。これらの動画を見ると、狩猟者は熊が横向きになった瞬間を狙い、前足の付け根付近にある心臓や肺を正確に射抜いていることがわかります。動画の解説によると、矢が肋骨の隙間から入り、内臓を突き抜けるような高度な狙撃が行われています。これらの映像は、弓で熊を倒すためには解剖学的な知識と冷静な判断力、そして卓越した射撃技術が必要であることをリアルに伝えています。

熊の駆除と行政・報酬に関する疑問

熊の被害が相次ぐ中、駆除を行うハンターの待遇や報酬についても関心が集まっています。命がけの作業に対する対価はどのようになっているのでしょうか。

熊の駆除は1匹いくら?自治体から支払われる報奨金の相場

熊を駆除した際に支払われる報奨金の金額は、自治体によって大きく異なります。一般的な相場は1頭あたり1万円から6万円程度です。例えば、北海道の浦河町では2024年時点で1万円、紋別市や美瑛町では6万円となっています。中には、国の交付金を活用して最高で8万円台まで引き上げた北海道池田町のような事例もあります。しかし、命の危険がある作業に対して「安すぎる」という声も多く上がっています。

熊ハンターの給料・年収はいくら?専業で生活できるのか

ハンターへの報酬は、捕獲時の報奨金だけでなく、出動に対する日当や時給が出る場合もあります。しかし、その金額は決して高くありません。時給に換算すると952円から2000円程度とばらつきがあり、中には「牛丼以下の時給1500円」と嘆くハンターの声も聞かれます。日当も数千円から1万2000円程度であり、弾代やガソリン代などの経費を考えると、手元に残るお金はさらに少なくなります。このように報酬が低く不安定であるため、熊の駆除だけで生計を立てることは非常に難しく、ハンターのなり手不足や高齢化が深刻な問題となっています。

なぜ全頭駆除しないのか?クマを駆除しない理由と保護管理のジレンマ

熊による被害が出ているにもかかわらず、なぜすべての熊を駆除しないのでしょうか。その理由は、法律による保護と生態系の保全にあります。熊は自然界のバランスを保つ上で重要な役割を果たしており、絶滅すれば他の動植物にも影響が及びます。そのため、法律によってむやみな捕獲や駆除が制限されています。行政や専門家は、人間と熊が適切な距離を保ちながら共生することを目指しており、被害を防ぐための対策と個体数の管理という難しいバランスの中で対応を行っています。

もし熊に遭遇したら?ボウガンよりも有効な対策とNG行動

ボウガンは法的に所持が難しく、実用性も低いことがわかりました。では、実際に熊に遭遇してしまった場合、私たちはどのように身を守ればよいのでしょうか。

なぜ「熊に背中を見せてはいけない」のか?逃走本能を刺激する理由

熊に遭遇した際、絶対にやってはいけないのが「背中を見せて逃げること」です。熊には、逃げるものを追いかけるという狩猟本能があります。背中を見せることは、自分が「弱い獲物」であることを相手に知らせる行為となり、熊の攻撃スイッチを入れてしまうことになります。また、背中を向けると熊の動きが見えなくなり、状況判断ができなくなるリスクもあります。遭遇した場合は、決して背中を見せず、熊から目を離さずにゆっくりと後ずさりをして距離をとることが鉄則です。

コンパウンドボウに毒は塗れる?毒矢の使用に関する誤解と真実

一部では、矢の威力を補うために毒を使うのではないかという疑問を持つ方もいます。しかし、日本国内において鳥獣の捕獲に毒物を使用することは、法令で厳しく禁止されています。環境への影響や、毒によって苦しんで死ぬ動物への倫理的な配慮、さらには人間への二次被害を防ぐためです。したがって、毒矢を使って熊を駆除するという方法は、法的に認められていません。

武器を持たない一般人が熊から身を守るための最適解(クマスプレー等)

一般の人が入手可能で、かつ最も効果的な熊対策グッズは「クマよけスプレー(ベアスプレー)」です。これは唐辛子成分などを含んだ強力なスプレーで、熊の顔面に噴射することで強烈な痛みを与え、その隙に逃げることができます。銃刀法の規制対象外であり、誰でも購入して携帯することができます。また、遭遇を避けるためには、鈴やラジオなどで音を出してこちらの存在を知らせることも重要です。スタンガンは対人用であり、分厚い毛皮を持つ熊には効果が薄いため推奨されません。ボウガンやナイフではなく、クマよけスプレーこそが、法に触れず、かつ科学的に効果が実証された最適な護身手段です。

ボウガンやコンパウンドボウで熊は倒せるのか?まとめ

●記事のまとめ
  • ボウガンでの熊駆除は物理的に可能だが危険性が極めて高い。
  • 60ポンド以上の威力があれば熊の体を貫通することは可能だ。
  • 矢は殺傷範囲が狭く、急所を外すと逆襲される恐れがある。
  • 国内では鳥獣保護法により、弓矢を使った狩猟は禁止である。
  • 銃刀法改正により、ボウガンの所持には公安の許可が必要だ。
  • 一般人が護身用でボウガンを携帯することは法的に不可能だ。
  • 駆除報酬は危険の割に低く、ハンター不足が深刻な課題だ。
  • 熊を全頭駆除しないのは、生態系のバランスを保つためである。
  • 遭遇時に背中を見せると、熊の攻撃本能を刺激し危険である。
  • 一般人の最適な護身手段は、ボウガンではなくクマスプレーだ。
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